日本思春期学会 HPVワクチンの普及に向けて


HPVワクチンの普及に向けて

ごあいさつ

 かつて中高年の病気とされた子宮頸がんは近年20〜30代で急増しております。この年齢層は出産・育児など生殖行動のピークにあたる時期でもあり、少子化のなかにあって一層社会的関心を集めたのもよく理解できるところであります。子宮頸がんはヒトパピローマウィルス(HPV)による性感染を通じて一定期間後発症することが判明しております。近年、性経験の若年化傾向は頸がんの早期発症に関連しているといわれており、疫学的にもセックスデビューする以前の若い女性へのHPVワクチン接種は予防にきわめて有効であることが確認されています。
 予防効果を確実にするために3回の接種が推奨されており、費用として約5万円と高額のため普及には公的助成が求められております。すでに欧米など世界26カ国で、主に10代前半を対象に公費助成が行われており、国内でも現在一部の地方自治体において助成が開始されております。
 普及にあたって費用の問題は当然考慮されなければなりませんが、若年者の性にかかわる問題であるので「性の健康教育」としてとらえる視点がなければ普及の過程でさまざまな障害をかえって抱え込むおそれがあります。また、青少年のみならず親世代および学校等関係者においても十分な理解が必要であることはいうまでもありません。
 HPVワクチンの普及に関して、すでに多くの学会が主に公費助成に言及し推進の必要性を訴えております。日本思春期学会の特徴はその名のとおり思春期の若いひとびとの健康問題を研究対象としており、さまざまな職種が参加して今までにも「性に関する健康教育」に積極的に取り組んできました。そういう意味でも普及活動に欠かせない教育・情報普及において先頭に立つべき団体であることを自覚しております。
 本学会は平成21年8月にHPV緊急プロジェクトを立ち上げ、ワーキンググループの熱心な作業の結果、この度「HPVワクチンの普及に向けて」というタイトルの報告書をまとめることができました。報告書の記述は単に科学的な事実を学術用語で伝える手法をとらずに、一般の方々にも理解しやすいようにQ&A方式を多く取り入れ、さまざまな疑問にこたえるように工夫しました。また、報告書は「一人ひとりの理解のために」および「子どもの権利と学校での健康教育にあたって」の2部構成になっており、個人教育と集団教育におけるそれぞれの留意点ならびに子どもの人権への配慮について記述しました。
 本報告書は学会理事会の承認を経て発行するものであり、本学会会員ばかりでなく、学会以外の関係者の普及活動の一助になれば幸いであります。

  平成22年8月吉日
日本思春期学会理事長 林 謙治


報告書のPDFはこちらから、ダウンロードできます。



■報告書への意見を広く募集しています

日本思春期学会HPV緊急プロジェクトでは、改訂版に向けて、みなさまの意見を広く募集しています。下記メールアドレスまで、ご意見をお寄せください。
satota@faculty.chiba-u.jp
日本思春期学会HPV緊急プロジェクトリーダー 佐藤武幸
(千葉大学医学部附属病院感染症管理治療部)